サワディーカップ。
タイで現地採用を募集している求人票では、営業職の募集が圧倒的に多いのはお気づきでしょうか?
このブログでは、私が日本で経験した営業活動(法人)と、タイで現在も実施している営業活動を通じて、日本とタイで実施する営業活動の違いについて、気づいた点を書いていきたいと思います。
目次
なぜ、営業職の募集はたくさんあるのか?
タイの日本人向けの求人票には、未経験でもやる気があればOKといった、未経験枠での採用も多く募集されています。それはなぜかというと、タイに進出している日系企業数は非常に多く、その日系企業の営業担当としては、やはり日本人担当のほうが話がスムーズという背景から、募集をしている企業が多いのです。
中には、営業職を採用してもすぐに辞められてしまうという企業もありますが、タイでは日系企業の進出数が5,000社を超えており(※2017年ジェトロバンコクデータ)、日系企業のみを対象としたビジネスだけでも十分にやっていける国なのです。そのため、日系企業向けの営業要員として、募集されているケースが多いのではないかと考えています。
良かった3つの事
1.キーマン(責任者)の特定とコンタクトが非常にやりやすい
私が経験した日本での営業活動は、決まった顧客に対して営業するルート営業ではなく、ほぼ100%新規で顧客を開拓する新規開拓営業でした。その新規営業の手法として、テレマーケティング(テレアポ)を行い、担当者を特定して、アポイントを取り訪問するという流れになっているのですが、日本では担当者への電話の取次ぎどころか、誰が担当なのかという事も、なかなか聞き出すことができないのです。
企業側も多くの電話営業への対応には慣れており、いつも決まった断り文句や、担当名を聞いても、答えないように言われていると言い、なかなか聞き出すことは難しいものです。
しかし、タイでは、日系企業に勤めている日本人が少ないという事もあり、誰が工場長なのか、誰がマネージメントディレクターなのかを、すぐにタイ人が教えてくれる企業のほうが多い印象があります。(中には教えないよう指示をしている企業もありますが)
その担当が会議などで不在が多い場合は、メールアドレス等を聞けば、わりと教えてくれる印象があるので、日本よりも担当者へのコンタクトが難しくないと思います。
2.飛込営業でもそんなに嫌がれない?
私が現在勤めている会社では、新規営業開拓の手法として1番多く実施されている方法が、「飛込営業」です。実際に日本でやった事がある方ならわかるかと思いますが、オフィスの人からは「なんなのこの人?」と冷たい目で見られ、二言目には「けっこうです」と断られることのほうが多いのではないでしょうか。
しかし、タイでは逆に飛び込み営業を珍しがられ、「暑いのに大変ですね」などと逆に気を遣われたり、人によっては、飛び込み営業で行ったにも関わらず、2時間程ずっと喋りっぱなしになる人もいます。
また、日本であれば中々会う事ができない上場企業の役員なども、少しだけなら話を聞きますよと、条件付きで対応いただいた事もあります。
恐らく、タイ工場、タイ支社に出向している日本人は少数や1人のみで仕事をしている場合が多く、普段の生活で日本語での話し相手がいなかったり、周りの顧客情報を知りたいというのが背景にあるのでないかと思っています。もちろん、忙しい方からすれば、飛び込み営業はただの迷惑にもなります。
私も1度だけ飛込営業をしていて、名刺交換をしたにもかかわらず、クレームを貰った事があります。
内容としては、「大手企業だから、弱小企業にはアポイントも取らないで訪問してくるのですか?」というものでした。その方とは、名刺交換をして、お時間大丈夫でしょうか?と確認したところ、これから来客なのでという事を言われたので、その日は名刺交換だけで去り、翌日、名刺交換の御礼メールを送付した返信に対してのクレームという、なぜ、その場で言われなかったのかが、今でも不思議です。
3.定時での帰宅は当たり前
これは、会社の方針や、会社の文化にもよっても変わるかもしれないのですが、私が勤めている会社では定時で帰っても何も後ろ指を指す人はいません。
それは、タイ人責任者をはじめとしたほとんどの従業員全員が、サービス残業をするという概念がないからです。誤解をしないでいただきたいのは、仕事が終わっていないのに帰るという事ではなく、時間内でしか働かないように業務管理をしているという言葉のほうが正しいと思います。
しかし、重要なのは、その時間内での仕事の中で、十分な成果が出ているかというと怪しいですが、ここでお伝えたいのは、帰りたければ定時で帰っても白い目で見る人や、成果が出ていないならもっと働けという人や、長く働いてる人ほど周りからの評価が高いといった日本式の営業とは考え方が違うという事です。
悪かった3つの事
1.価格重視で比較される事が多い
これは、私が販売している製品が他社とものすごく大きな差別化があるわけではない製品であるからという事もあるのですが、その提案をした営業・会社という事に価値を感じてもらう事は少なく、他社製品を利用しても同じだよねという事で、結局は安い製品を重要視されてしまう事が多いです。
この背景としては、タイ支社で働いている現地法人の代表は、オーナー企業のオーナー社長ではありません。言い方を悪く言うと、雇われ社長・雇われ現地責任者であり、何か予算を利用して購入する際は本社がある日本の承認が必要となります。
その際、見積書が1社では相見積もりを取ったのかという確認が入り、当然、どんなに相見積もりで他社価格が安ければ、どんなに提案がよくても、製品が高い場合は、その高くてもこのこっちの製品を欲しいという理由を本社に押し通す力が必要となり、本社から「なぜ??」と繰り返し聞かれると面倒くさいと思い、「相見積もりの結果、料金が安いからこっちの製品を買う」という結論に至るケースが多いのではないかと思います。
これが日本であるならば、専門の担当者を経由して慎重に判断されると思うのですが、タイではもともと日本人が少数精鋭で仕事をしている事もあり、細かい製品特徴はわからないけど、安いほうにするよという流れになってしまうケースもあるのかと思います。
2.購買部門のタイ人では賄賂の要求は当たり前
これは本当に多いです。いくつかの事例については、また別途ブログを書こうと思いますが、購買決済をタイ人に任せている企業は非常に危険です。
日系企業の責任者も、「うちの購買は必ず相見積もりを取って選定しているから大丈夫」と言っている人もいましたが、その比較対象が適切な会社なのか?という事を日本人が細かく確認することはほぼ不可能で、偽造の見積書をそれっぽく友達の会社に作ってもらえば、見積比較の結果A社の値段が安かったので決定したと報告をすれば、疑う日本人はほとんどいないでしょう。
そして、そのA社の見積には利益が上乗せされてあり、購買部門の決裁者には、その利益からお礼金が支払われるという話は、珍しい話ではありません。
そのため、日本人責任者が購買に任せているという日系企業は、賄賂ありきの営業が行われていると思って営業をしましょう。
3.営業スキルがないタイ人が多い
これも、一概に全ての企業が対象になるわけではないのですが、何も考えないで営業をしている人は多くいると思います。日本人は、労働許可証やビザの関係で、通常の営業マンとは異なり、マネージャーやアシスタントマネージャーなどの役職者として採用される事が多いのではないでしょうか。
そうなると、チ―ム、部門内のタイ人営業が引き起こすื日系企業のトラブルは、最終的には全て日本人に回って来ることが多いです。
私も実際に知らないところで、トラブルを引き起こしたにもかかわらず、全く報告はなく、後日、日本人からクレームを貰い、クレーム処理にかなり時間が掛かった苦い経験があります。
タイでは、日本で考えられないようなビジネスマナートラブルが多くありますので、こういったの事も起こりうると考えていてください。
最後に
海外に住み、海外で営業をするというメリットは、上記の良い点、悪い点を身をもって経験をするという事だと思います。出張ベースで海外営業をするという話を何度か聞いたこともありますが、現地に住んで生活するからこそ理解することができる文化や風習は、仕事にために数日滞在するだけはわかりえない事もあると思います。
また、営業活動をすることで、海外に住んでいる様々な人の意見を聞くことができ、新しい意見や考えを聞くことができるのも、海外で営業をすることで得られるメリットだと思います。
このブログが今後、タイ、海外で営業活動を始める方の参考になれば嬉しいです。